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エッセイ
ああ言えばこう言え!
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ああ言えばこう言え!その48

 人にはそれぞれ天から与えられた能力がある。もちろん、自分にどんな能力があるのかを知らなければ伸ばしようもない。また、能力を認知する時期も大変重要になる。結局、認知することなく天に上げられてしまっては元も子もない。残るのは神の悲痛な叫びだけである。私など、文章を書くという能力についてのみ、取り急ぎ恵まれたものと思い込んでいる。思い込みも立派な能力だから、現在のところ、神の雄叫びは良好だと硬く信じている。
 しかし、文章は上手く書けても、絵を描くことは全くもって前進しない。歯の痒い幼い飼い犬が泣いて喜ぶ一本の骨ならば、一筆で難なく描けても、何本もの線を要するような立派な絵などは、もう完全にお手上げということになる。
 例えば、私が描くドラエもんは、かの有名なゲゲゲの人気妖怪であるねずみ男をメタボにしたような絵になり、子どもたちから随分気味悪がられている。また、くまのプーさんに至っては、満面の笑顔に誤って絶え間なく並ぶ歯を付け足してしまったものだから、それはもうプーさんではなくなり、即刻子どもたちに処分されてしまった。
 それでも、完全にあきらめた訳ではない。最近では、うなぎをうなぎらしく一筆で描く技術を極めつつある。ただ、課題も残る。私自身、それがうなぎなのか、それともあなごなのか、あるいはどじょうなのか、区別のつかない時がある。その場合、どう対処すべきか。
 実は私には秘策がある。それは自分の能力を大いに発揮することである。一筆で描いたものの横に簡明な説明を添えればよい。だから安心している。

甲山羊二
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