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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次
ああ言えばこう言え!その47
長引く不況でアルバイトを探すのにも一苦労だという。知人のご子息は大学生。親が親だけに勉学に勤しむどころか、気味の悪い化粧の女性と交際中。これまたかつての親そっくりである。そのご子息、何度もアルバイトの面接を受けたものの、なかなかうまくいかない。アルバイトといえば、私の学生時代はまさに引く手あまたの状態であった。気味の悪い化粧の女性との交際はなかったものの、アルバイトを通して色々な経験をしたものである。それらは、私の大切な思い出であり、かつ貴重な財産でもある。
印象的なアルバイトといえば、遊園地での着ぐるみなどはそのひとつである。うだるような夏の暑さの中、ウサギの着ぐるみで園内を歩き回るのは実に大変な作業である。適当に愛想を振るものの、着ぐるみの中の本人は鬼の形相である。所要時間約1時間は修行以外の何物でもない。時には悪ガキによる後方からのタックルに遭遇することもある。そういう場合は容赦などしない。教育的効果を鑑みて、素人ながらの実践を試みる。可愛い表情のウサギさんが逃げ惑う悪ガキを全力で追いかける。恐ろしくなった悪ガキは泣き出す。泣きながら逃げ続ける。それでもウサギさんは笑顔で追いかける。これは滅多にお目にかかれない貴重な光景であったに違いない。
もしチャンスがあるならば、もう一度ウサギになってもいい。いやはや、ウサギもいいが陸ガメもいい。悪ガキに遭遇するや否や、いきなり二本足で立ち上がり、全力で追い回す。笑顔の陸ガメさんが全力で悪ガキを追いかけるのである。これなども、一生に一度お目にかかれるかどうかわからない位に、貴重な光景になるに違いない。
甲山羊二
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