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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次
ああ言えばこう言え!その44
今度は、中学校時代の同窓会の話である。これも約30年振りである。しかし懐かしさなど全くない。なぜなら、中学校時代の私は完全なる落ちこぼれで、しかも独自の理論で先生を困らせ、ようやく独自の押しの一手で高校進学にこぎつけたという、悲しく辛く切ない過去を思い出すからである。酔っ払ってつい出席の返信をしたものの、後悔は日に日に増すばかり、同窓会当日の直前には、生まれて初めて失踪することを思いついた程である。とりあえず、私は何とか紛れることを決意した。
ところが、会場に到着するや否や、私は仰天してしまった。先生もいなければ、誰もいない。いるのはかつての数人の落ちこぼれ仲間だけだった。
「あの頃は、生きるのに大変だった。まさに、毎日が戦いだった」
これでは、戦いに沈んだ仲間を偲ぶ会である。しかし、落ちこぼれは強い。かつての落ちこぼれは、その後の人生では見事に立ち直り、その面影すらない。
「俺たちは見事に更生したのだ!」
やはり人間は変化する。当然である。最後に私たちは全員こうで叫んだ。
「あの頃の俺たちは落ちこぼれという演技をしていたのだ」
これは嘘である。しかも相変わらず独自の理論である。これではまだまだ真の更生は遠い。
甲山羊二
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