牧場小屋
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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次
ああ言えばこう言え!その39
なぜか、私は人間よりも動物に好かれる性向らしい。確かに、ここ数年で人間の友人は減少傾向にあって、一方で仲良くなった動物は増加傾向にある。
人間も折り返し地点を過ぎると、人間同士の関係を煩わしく思うことがあるらしい。私などはその際たる者である。余計な付き合いをしているが故に、冠婚葬祭の葬祭編に引っ張り出され、悲しくもないのに無理矢理悲しい表情をして、香典の金額以下の、あまりにも具の少ない巻き寿司1本で誤魔化されるのは、真にやるせない。
その点、動物との関係には煩わしさはない。近所の柴犬を丁寧に撫でたからといって、或いは偶然猫が擦り寄ってきたからといって、奢って奢られるという関係には発展しない。長年飼っていたペットが死んだりするのは悲しい現実ではあるが、わざわざ何百万もする葬儀を行うことはない。まして、香典返しに頭を悩ませたり、相手からの品に腹を立てたりすることもない。
そんな思いで毎日を過ごすのは実に楽しい。この間も、動物園に行ったら、本当に多くの動物たちが優しく私を見つめてきた。そのことを家族に話すとこんな言葉が返ってきた。
「ただ餌が欲しかっただけなのよ」
そういえば、そうだった。動物たちの目当ては、私が食べていたベビーカステラだったのかもしれない。
甲山羊二
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