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エッセイ
ああ言えばこう言え!
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ああ言えばこう言え!Ⅱその31

 今回もまたまた引き続いて、書籍紹介をしてみようと思う。今回は、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』についてである。
 デフォーといえば、よく知られたイギリスの作家だが、ここ最近は『ペスト』が話題となりすぎて、ロビンソン・クルーソーは隅に追いやられた感があったが、『ペスト』より、『ロビンソン・クルーソー』が数倍、いや数十倍、いやいや数百倍、それ以上に素晴らしい作品であることは間違いない。これは断言できる。
 読むたびに世界が広がる。
 読むたびに感想が異なる。
 読むたびに嫉妬さえする。

『ロビンソン・クルーソー』は小説の域を完全に超えた、まさしくルポルタージュに近い。

 その筆致は慎重かつ丁寧である。
 しかし大胆に読み手を魅了する。
 それらが見事に交錯をしていく。

 人間の思惑と神の思惑の相違もまた、この作品のひとつの読みどころとなる。しかし、ここでの宗教そのものが、決して押し付けがましくなく、嫌みなども一切見当たらない。

 デフォーに酔う。酒に酔うのではない。あくまでも『ロビンソン・クルーソー』にである。
 デフォーに酔いしれる。何度も言うが、あくまでも『ロビンソン・クルーソー』にである。

 こういうことを書いていると、またまた『ロビンソン・クルーソー』が無性に読みたくなってきた。これはもはや只者ではない。はっきりいって、かなりやばい。相当にやばい。これは麻薬、いやいや既に魔物である。




甲山羊二
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