牧場小屋
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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次
ああ言えばこう言え!Ⅱその15
今年も花火の季節がやって来た。毎年のこと、僕は気の置けない仲間とともに、なにわ淀川花火大会を鑑賞する。僕の事務所からほぼ正面のロケーションで打ち上げられる花火。その壮大さには毎回感動を覚える。と同時に、一方で風流かつ風雅な感慨に浸る。花火は人間のあらゆる感情を呼び覚ます兵ものだと思う。
子どもの頃、僕は打ち上げ花火が好きではなかった。華やかさを味わう以前に、なぜかあの爆音に耐えることができなかった。時には両手で耳を覆って見物したこともある。これもまた実に懐かしい思い出だ。今は爆音もいとをかし。怖いものは他にもたくさんあって、それらは目にも映らないし、音も立てないことがわかった訳で、これはひとつの境地に達したことを意味する。
花火にはもうひとつ、そこに情念のようなものを感じ取ることができる。打ち上げる側の、そしてそれを待ち受ける側の、あらゆる期待が集約されてひとつになる。何とも言えない一体感がそこに生まれる。
とにもかくにも、なにわ淀川花火大会は僕たちにとって大切な恒例行事となっている。ビールにワインに焼酎にと歓談もどんどん進む。花火よりもアルコールと言われれば、「そうでございます」と首を垂れるより他はない。
花火とアルコール。それも良いではないか。何が悪い。と心の中で叫びながら、仲間たちと集う。オフはこうあるべきなのだ。
甲山羊二
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