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エッセイ
ああ言えばこう言え!
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ああ言えばこう言え!その24

 暑い夏を涼しく過ごす方法について、私たちはあらゆる知恵を絞ってきた。
しかし何といっても行き着くところは怪談話である。流れる汗がピタッと止まり、たとえむさ苦しくても互いに体を寄せ合わずにはいられない、怪談話は暑さを忘れさせてくれる妙薬なのである。
 私も数多くの怪談話を知っている。
その事実を嗅ぎつけて、毎年夏になると子どもたちが怪談話を聞くために私の元に集まる。
私の方も、毎年同じ話で飽きられないように、創意と工夫を凝らし子どもたちを恐怖のどん底に突き落としている。
しかし回数を重ねれば重ねるほど、創意と工夫にも限界が生じてくる。なかには、その限界につけこんで、見破ろうとする嫌なガキも出てくる。
 私の知人などは、私と全く同じ目に合っているらしく、とうとう実力行使に出たという。
家族や友人を動員して、押入れの中や床下などに待機させ、合図とともに一気に登場させるという手の込みようである。
子どもたちにも泣きながら笑うというほど好評で、おかげで家族には頭が上がらず、友人にはバイト代まで支払うという事態にまで及んでいるらしい。
別の友人などは、創意工夫が頂点を極め、自分がこしらえた怪談話に魘されるという、まさに「怪談 本末転倒」である。
 確かに怪談話は暑さを忘れさせてくれる。しかしその裏ではそのために冷や汗ものの夏の努力があることを子どもたちは知らない。
甲山羊二
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