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エッセイ
ああ言えばこう言え!
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ああ言えばこう言え!その23

 猛暑、激暑、酷暑の夏である。
地球環境も大いに重要ではあるが、こう暑いと、とにかく先ずは精神衛生上の環境を整備して、それからゆっくりとグローバルな問題を考えてみたいと思うのは間違いだろうか。
猛暑、激暑、酷暑でしばしば問題になるのは熱中症である。
かつて私はあることに熱中しかけたことがあって、ここだけの話だが、ちょいと今も秘密裡でそれは継続しているから、取り急ぎ問題と言えば問題なのかもしれない。
問題の発端はこうである。
猛暑、激暑、酷暑の中、私は友人と二人で電気店が並ぶ界隈を、あるものを物色するために歩いていた。
しかし、どの店でもお目当てのものは見つからない。周りは肌を露出させた夏本番のカワイ子ちゃんばかり。
そのうち「大体、なんでこんなむさ苦しい野郎と二人で大汗かいて歩いてるんだ」と互いに険悪な雰囲気で、一触即発というところ。

そこで二人の目に映ったのが「・・・喫茶」の看板。
それに思わずつられ、「とにかくバテバテだっ!そして限界だっ!」と叫びながら階段を上がって入った喫茶店。
確かに喫茶店は喫茶店だが、どうも様子がおかしい。普通なら「いらっしゃいませ」のはずが、「お帰りなさい!ご主人様」である。『ご主人様』など、誰にも言われた経験などない。
店員の服装も変である。フリル全開、同じヒラヒラのメイドスタイルで、誰もが笑顔いっぱいである。
「ご主人さまぁ、今日は初めてニャン?」いつの間にか猫になっている。
「二人はお友達?ごゆっくりチュンチュン」今度は鼠である。
「お遊びしようよ、ピョンピョン」いよいよ跳ぶのか。私たちが入ったのは、所謂メイド喫茶だったのである。 帰り際、会員登録するように強く勧められたが、私たちはとりあえず断った。
するとである。「イヤイヤ。○○ちゃん、悲しいメソメソ」女性を泣かすことなど断じてできない。いやしてはならない。
私たちはそこでとうとう会員になってしまったのである。 時々、店からメールが来る。
つい先日も、いつの間にか溜まったポイントでじゃんけんゲームができるとのことであった。
じゃんけん。なんとも懐かしい響きではないか。

甲山羊二
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