牧場小屋
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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次
ああ言えばこう言え!その17
つい先日のことである。
近所の公園で、たまたま通りすがりの老女が、我が愛する銭亀の日光浴を見るなり、「ひゃぁ!この亀生きてるの?」と真剣に聞かれるものだから、私は口から本当に心臓を吐き出しそうになるくらい、驚愕し絶句してしまった。

死んでいる亀を飼い、その亀にわざわざ日光浴をさせる人間など、この世に存在するのだろうか、まさに私の脳はウニ状態になってしまったのである。
さて、この老女の不可思議な言葉、あらゆる角度からの分析が可能である。
まず、公園で亀に日光浴をさせる私の風体が、動物虐待の姿として映ったのではないかという点である。
そうなれば亀にとってこの老女はまさに救世主、社会派老女の出現ということになる。
次に、人間に飼われながらも健気に生きる姿に感動し、弱気になっている自分を奮い立たせようとした故の発言であったのではないかという点である。
そうなれば、老女にとって亀は、いや亀に日光浴をさせていた私が命の恩人ということになる。
いずれにせよ、老女の言葉は深遠である。
考えれば考えるほど、老女との再会を熱望してしまう。
しかし、その後の老女の足取りは不明である。
手がかりはたったひとつである。
「この亀生きてるの?」この言葉以外に無い。
甲山羊二
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