牧場小屋
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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次

ああ言えばこう言え!その16

 私は飛行機が苦手である。これまでも苦手とするものは何とか努力して克服してきた。
しかし最後まで飛行機については、克服することはできなかった。
今後もその可能性は全く無いといってよい。
何故あの巨大物体が空中を飛ぶことができるのか、どんな科学的根拠をもって説明されても、私の頭の中は余計悩ましくなるばかりである。
ついには、意を決して空中浮遊を試みたものの、尻を地面にうちつける始末である。
ならばと加速をつけてみたところ、今度は顎を強打してしまった。
私の期待は完全に打ち砕かれてしまったのである。
 それでも止むを得ず飛行機に乗らざるを得ない時、私の心臓は普段の2倍以上は打ち捲る。
興奮のあまり、血圧も相当高くなっているはずである。
その興奮を鎮める為に、とにかくビールを呑み捲る。
しかし、フライト直前にはすっかり酔いも覚め、ただただ祈る自分がそこにある。
神や仏に、いや最も心を込めて祈るのは機長に対してである。
「機長様!これが最後のフライトと思い、あなたの技術のすべてを動員してくださいませ!」
 祈りのお陰であろう。

私が乗った飛行機は、これまで特に問題も何も無い。しかし未来はわからない。
とにかく私にとっては、飛行機より海に浮かぶいかだの方が精神衛生上よろしい乗り物なのである。
甲山羊二
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