私、甲山羊二はこれまでに実に多くの人間を傷つけ殺めてまいりました。その内実たるもの老若男女問わず、その数は間もなく天まで届くでしょう。その一方で決して生かしてはならない人間を生かしてしまっている事実もここで告白しなければなりません。傷つけ殺め損ねたその罪は極めて重く、それは許されるものではありません。この場をお借りして謝罪を致したく思います。
次に私は多くの虚実をさも現実のこととして発表していたことをここに告白し謝罪を致します。虚実はやはり虚実であり、現実は現実であります。嘘は泥棒の始まりと言われますが、虚実は甲山の始まりとなれば一大事です。虚実の真相を一日も早く究明致すとともに、今後は虚実の技術を更に向上させ、現実を厳重に管理することによる徹底した隠蔽に務めて参る所存でございます。
さて、問題は今後のことであります。人間を誰ひとり傷つけることなく、また殺めることなく、作品が書けることなどありません。また、ルポライターでもないこの私が虚実抜きに、はたまたちょっとした現実の挿入抜きに、作品を仕上げることなどできません。日本昔話においても人間を食い殺す鬼が登場しますし、奇妙な爺さんが花を咲かせたりもしております。桃太郎に至ってはそのような巨大な桃などあるはずもなく、あっても流れることなく沈んでしまうはずです。山へ芝刈りに出掛けた爺さん、川へ洗濯に出掛けた婆さん、年金など受給できる時代でもなく、その生計は何に依ったのでしょう。きっとスポンサーが存在していたに違いありません。実は私は桃太郎侍がそれであったのではと推測しているのです。
竹取物語に至っては憤りさえ覚えます。度を超える竹の伐採は明らかに自然破壊です。さらに光り輝くかぐや姫はどんな衣服を身にまとっていたのでしょう。着替えはどうしていたのでしょう。風呂に入れると溺れます。それにあのおびただしい黄金も不思議です。私は先物による投機の結果としか思えません。
デビュー後7年の今年、甲山は周辺のまた近隣の同業者に十分配慮しつつも、新しい作品の構築に邁進して参りたいと考えております。従って上記の本来すべきではない謝罪などここに取り消し、もちろん反省すべきところなど甲山には一切なく、個別的独自的作家活動の強化を進めて参りたいと考えております。 |