『極北』
マーセル?セロー
村上春樹訳
中公文庫
セローの作品を初めて手に取った
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経歴と同じく小説もまたインテリジェンスな香りは確かに伺える
しかし押し付けがましさを控えた筆致にはむしろ親近感さえ覚える
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本著は四部構成からなる長編だ
「私」と「ピング」のふたりの偶然の接触からその話は幕を明ける
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そして初期段階でふたりの事実が読者に明かされる
驚愕は活字の追い方をリズミカルなものに変える…
そうして本著の持つ世界観へと引き込まれていく…
人間とその人間が創り上げた高度な文明との対峙…
人間が対峙せざるを得ないもの
それはまず自然だ
自然の摂理には人間は逆らえない
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しかしまた一方で自然は人間に脅威を与えながらもそれを究極の祈りへ導く力を持つ
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だがしかし文明はそうはいかない
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それは時に人間を徹底的に滅亡に追いやろうとする悪魔に変貌する
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人間による創造が人間に刃を向く
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人間自らの破壊
残るのは果てしない絶望だけだ
そうした思慮を読者に導くところもセローの実に巧妙なところだ
長編を読み進めるにはそれ相応にパワーが必要だ…
それを下支えするのが訳者の持つ力だと僕は思う…
その意味では十分な読み応えと満足感を得られる…
セローの世界観
その心地良さは思慮へと繋がる…
そうした流れに委ねるのもいい |