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甲山羊二オフィシャルブログ
Writing by 甲山羊二
 オフィシャルページにある奥の部屋で、コラムでもなく、エッセイでもなく、もちろん小説でもない、ただのつぶやきをほんの少しだけ形にしようとする。
 僕がつぶやくことで僕自身が導かれ癒され納得する。
 それもいい。
 さすが典型的B型人間甲山羊二だ。
 だからいい。やはりいい。


■公式ホームページ


再び松本清張
『或る「小倉日記」伝-傑作短編集2』
松本清張
新潮文庫

松本清張のデビューは意外に遅い
41歳で懸賞小説に応募…
44歳で芥川賞を受賞する
その受賞作品が表題になっている
「或る「小倉日記」伝」である…

流石芥川賞作品だなどとは敢えて決して言わない
この作品は芥川賞作品だから傑作なのではない…
松本清張の世界が凝縮されている


松本清張の世界
それは日本人が持つ心情風景を見事に描写したものに他ならない
しかも日本の各土地の風土に根ざした心情描写…
決して一律でない風土と心情が人間の行動をその都度決定していく

清張作品は日本人を知る上での資料ともなり得る

今回は恣意的に作品名を挙げない

とにかく読む…
そして洞察する
日本人とは何か
そして自分とは何者かについてを
2020-07-20 00:00:07[485]


驚異と怪異
「驚異と怪異」
兵庫県立歴史博物館

驚異と怪異を観に姫路に行った
白鷺城の裏手にある歴史博物館
周囲の閑静さと館内の静寂さに比してモンスターの皆共は実に生き生きとしていた…

人間の創造の威力は凄まじい…
それによって生み出されたモンス
ターはその形状などに関わらず伸び伸びとしている

それは確かに驚異かもしれない
また怪異の象徴だと言える要素まも多分に含まれる
しかし驚異も怪異も結局は人間の心中に潜み機能し続ける物体であり物質他ならない
つまりは本体は架空のものなのだ

更に付け加えると…
それは人間を超越したように見せかけて決してそこには到達しない

むしろ人間に寄り添う為にある
それがモンスターの存在意義とその価値なのではないだろうか…

驚異も怪異も人間に生きる上でのある意味の抑止を与えてくれる
それは人間自身が求めたものだ
人間はこうすることで自制を覚え
てきたのだろう

現代人はどうか
驚異も怪異もないのではないか
そうなれば自制なども当然ない
モンスター欠如は人を朽ちさせはしないだろうか
怖いものなし程怖いものはない
それに無関心な程怖いものはない
僕はそう思う…
2020-07-06 00:44:22[484]


政治と祭り
『国賊論』
適菜収
KKベストセラーズ

政治と祭りには一切関わらない…
これは一貫しての僕のスタンスだ

但し誤解のないように急いで付け加えておくが…
政治に全く興味がない訳ではない

良い有権者は良い納税者でもある

納税者のひとりとして政治をしっかり見届ける…
見届けることは不要な関わりには結び付かない
不必要な人間関係にも関わらない

だから祭りにも相当距離を置く

では納税者として見る最近の政治は如何なものか
武漢肺炎の蔓延という有事に対して政治は一体どう対処したのか
結果は実に見事なものだった…
血税は安物のマスクに変わった
血税は運転資金も回転資金も無い趣味運営の飲食店等に給付金としてばら撒かれた
血税は委託先の裏金に回された
結果は官僚どもの愚鈍を晒した
武漢肺炎の蔓延という有事に対して納税者は見事に馬鹿にされた
納税者として見る最近の政治は輩の独壇場だった

納税者を愚弄する政治家も官僚どもも皆残らず国賊に他ならない
パフォーマンスに騙される国民も国賊に飼いならされた屑となる

本書は実に爽快だ
単なる感情論に終始しない
武漢肺炎なども吹っ飛んでしまう
本書はゲーテの言葉を引用する…
「活動的なバカより恐ろしいものはない」
活動的なバカとは一体何者なのか

自らをバカと認識できない人間
僕はそう理解する

ところで
武漢肺炎について
その蔓延と渦中にいる人々とその言動はやはり興味深いものがある

人間世界にある不条理と不合理
見えないものへの畏怖と恐怖心

『ペスト』
カミュ
新潮文庫

薄っぺらい絆だとか医療従事者への意味不明な拍手をどうこうする前に読むべき一冊がここにある

話を変えよう…
安倍総理を見ていてつくづく思う

やはり漢字の読み書きは重要だと

この人にカミュは読めやしない
読了などはもはや奇跡に近い

しかしながら
また一方では
日本は平和だ…
漢字の読みに乏しい人間も総理になれるのだから
日本はまだまだ夢と希望があるのだとつくづく思わされる
2020-06-22 00:29:28[483]


松本清張-短編の世界-
『黒地の絵-傑作短編集1-』
松本清張
新潮文庫

短編小説は凝縮されたなかにも、人物描写と心理描写を織り交ぜ、巧みに表現しなければならない…
それを超越した作品だからこそ、
傑作の短編と評価されるのだろう

僕には松本清張はお馴染みのはずだが実はお馴染みではなかった…
彼の短編小説をなおざりにしてしまっていたのだ…
今後は反省の意味を込めて傑作短編集をじっくりと読んでみたい…

今回は傑作短編集1

以下はあくまでも僕の恣意による極厳選作品として…

「二階」
これはとてもいい
短編のお手本だ…
だからといって真似などはしない

表題にもなっている「黒地の絵」
これは朝鮮戦争を背景にした作品

松本清張の世界が十分味わえる…
米軍小倉駐留師団から話は入る…
祭りの太鼓のリズムを契機として横暴の限りを尽くす黒人部隊兵…
役立たずに終始するMPと警察
A?G?R?Sでの日本人労務者差別
戦場最前線に立たされる黒人兵…

まだまだある…
ここは出し渋る

松本清張という作家が作品の執筆ごとに膨大な資料を収集したことはよく知られる
その度に神田の古本屋群からおびただしい在庫資料が無くなっていったのだとか…
まずは時代考証を決して怠らない

だから書ける…

松本清張の世界
まだまだお馴染みではなかった…
反省もまた次の勉強に繋がるのだ
2020-06-08 01:14:46[482]


経済の本
『父が娘に…経済の話』
ヤニス?バルファキス
ダイアモンド社

人に何かを伝えることは難しい…
それが専門知識とくれば更に困難さは極みに達する
しかも伝える相手が肉親であれば妙な感情が交錯するから厄介だ…
この本はそうした立ちはだかる幾つもの壁という壁を何とも上手く乗り越え切ったなかなかの強者だ


経済には必ず人間が絡んでくる…
実は当たり前のことだけれども、その当たり前を優しくかつ懇切丁寧に解き明かす…
経済は実に魔物だ
しかしそこに絡む込む人間こそ真の魔物であることを教えてくれる


娘に語る経済の本
経済を語りつつも実は人間を語る

教え諭すということは強要でも強制でも決してない
相手のことを慮る
この本はそのことをも解き明かす
2020-05-18 09:30:18[481]


旅の断片
『旅の断片』
若菜晃子
アノニマ?スタジオ

書き手の立場から
紀行文の創作は実に難しく思う…
思い入れが強すぎれば当然読み手に対して押し付けがましくなる…
かといって淡白過ぎてしまうと文章から味が消える
著書はそうした難しさをするりとくぐり抜けながら、読み手を自らの旅の世界に見事に誘ってくれる


旅は欧州や亜細亜や北米とまさに世界を駆け巡る…
そこで感じたことを感じたままに綴るのではない…
先ずは人がいる
喜怒哀楽があり生活の匂いがある

次に自然がある
単純に味わうだけのものではない

自然と対話する
ありのままのものをありのままに自らに受容する
地球環境がどうとかこうとか要らぬお説教もない

作者の懐の深さ
卓越した文章力
なせる技は嫉妬さえ覚えてしまう

本の装丁も良い
挿絵もシンプルでほのぼのとする

表紙も特徴的だ
カバーに隠れずやはりありのまま

ありのままの良さが実感できる…
優しさが全てに表れている一冊だ

追記
実は同じ著者で同じ出版社のお勧めがもう一冊ある
『街と山のあいだ』
2020-05-04 09:00:06[480]


古典を読もう
古典を読もう!!
などと呼びかけしようものなら、
どれだけ絶対拒否の返答が聞かれることだろうか…
それでも敢えて呼びかけてみたい

古典を読もう!!

「古典は暗記物」
これは大きな間違いで勘違いだ…
確かに受験勉強に際してはそうした側面があることは否定しない
そこからの脱却…
古典を鑑賞する…
古語も文法も暗記など一切しない

良い訳を見つける
良い導き手を探す
古典の世界をじっくりと味わう…
更にいえば現地に足を運んでそこにある風物や空気に直に触れる
古典が暗記物であるという厄介な先入観は必ずや払拭されるだろう

良い訳はどこで見つけるのか
お勧めは角川のビギナーズクラッシックシリーズだ
原文と訳文が隣同士でなくお互いが邪魔にならない
先に訳文を読むのも何ら問題なし

注釈もあってとても見やすい…

良い導き手はどいか見つけるか
コストが掛からない最善の方法…
以下のサイトがやはりお勧めだ
国語を専門とする「ことばスタジオ」が運営するオフィシャルサイトの『国語教室』
古典だけでない…
読み方は日本文学全般に及ぶ…
書き方のページも充実している

http://ww1.hot-milk.jp/~kokugo/

一度覗いてみては如何だろうか…
何度もくどいようだが必見である
2020-04-20 00:01:55[479]


静かな小説
『アルジェリア、シャラ通りの小
さな書店』
カウテル?アデミ
作品社

ある事情があって
とにかく静かな小説を読みたいと思った…
購入の経緯は新聞の書評欄だった

静かなタイトル…
即日購入を決めた

僕はアデミという著者を知らない

アルジェリアについても同じだ…
詳しいことはほとんど知らない…
でも知らなくても一向に構わない

知らなくても静かな時が著者と著書と共に過ごせる
こういう小説は滅多に出会えない

ここでの静かな時
戦争、死、抗争…
アルジェリア解放戦争がリアルに描写されているにもかかわらず…
それでもそこには一貫して本という生き物の沈黙を守りながらの息遣いが聞こえる…
シャラ通りの書店は書店でありかつ出版社だった…
物言わぬ本への飽くなき愛着とそれを放逐する人々
それらの見事な描写が読み手に静かな時を与える…

便利さにすっかり埋没した私達…
便利なのに多忙だ
だからこそ静かな時が必要なのではないだろうか…
静かにそう思う
2020-04-06 00:44:21[478]


三島由紀夫おぼえがき
『三島由紀夫おぼえがき』
澁澤龍彦
中公文庫

三島由紀夫を文学的に評論する…
その意味で本著は名著に値する

三島由紀夫を思想の断面から捉えたものは実に多い
それは致し方ない
なぜなら三島は思想家でもあり、またれっきとした行動家でもあったからだだろう…
だかそもそも彼はやはりれっきとした文学者だった
そこを忘却した三島論に時々へき癖することもある

本著が名著である理由は決してそれだけではない…
澁澤氏自身が三島と親交があった

しかも重要なのは思想家また行動家の三島ではなく、文学者三島そのものとの交友であったことだ…
だから各氏との対談も文学論で活き活きしている
三島を単に持ち上げたりしない…
論理的批評を見事に展開していく

澁澤龍彦とくればやはりサド侯爵がよく知られる
もちろん彼もまた立派な文学者だ

そして紛れもなく彼は一流の批評家でもあるのだ

文学者と批評家
見事な両立にはただ圧倒される…
2020-03-16 08:14:11[477]


小泉八雲集
『小泉八雲集』新潮文庫

再度続けてラフカディオ・ハーン
に触れておきたい
今度は小泉八雲としてのハーンだ

小泉八雲の作品はよく知られる…
その殆どが怪談だ
だがしかし八雲は名随筆家だと僕なりに評価する…
特に男女の情愛についての随筆は一読の価値がある

八雲の説く情愛は実はそのまま怪談作品へと?がる
情の薄さは幽霊を生み出せない…
情の並々ならぬ厚さが幽霊という存在を形づくる…
幽霊とは単に恨めしさからくる存在なのではない…
日本人独特の情がそれを形象していくのではないか

この作品集は文庫版でしかも分厚くはないものだ…
けれども読むのに時間を要する…
それはなぜだろう
日本人の持つ情…
きっとそこに自分なりの思いを馳せるからだろう
だから読書はいい
2020-03-02 00:00:07[476]