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甲山羊二オフィシャルブログ
Writing by 甲山羊二
 オフィシャルページにある奥の部屋で、コラムでもなく、エッセイでもなく、もちろん小説でもない、ただのつぶやきをほんの少しだけ形にしようとする。
 僕がつぶやくことで僕自身が導かれ癒され納得する。
 それもいい。
 さすが典型的B型人間甲山羊二だ。
 だからいい。やはりいい。


■公式ホームページ


ビゴー的日本
『ビゴー日本素描集』
『続ビゴー日本素描集』
岩波文庫

フランス人の風刺画は日本でもよく知られている
それは少々強烈で中には頭にくるものも含まれる
フランス人のブラックユーモアは時に理解し難い
しかしビゴーは理解の範疇に入る

明治中期の日本を描いたビゴー…
その画はまさしく正当ユーモアに満ち溢れている
外国人から見た日本人の生の姿…
それを文章ではなく画で知ることの有意義さを本書は教えてくれる

ビゴーは日本人を奇異なものとは捉えていない…
それをひとつのある意味独自の風土として風俗として理解している

更にいうなら…
自らの描く風刺画によってそうし
た理解を深めようとさえしている

僕はそう思う…

続編にはビゴーの侍姿の写真が掲載されている…
ビゴー流のユーモアは尽きない…
尽きないどころか自らもユーモアの対象としていた節さえも伺える

本書もまた貴重な資料他ならない

但し無理に読まなくていい
感じればいい…
それで十分だ
2021-03-08 00:30:02[495]


珠玉の随筆
『中勘助随筆集』
岩波文庫

中勘助の名を聞けばその殆どの人は名作『銀の匙』を思い浮かべる

それでは一体なぜ『銀の匙』が多くの人に読み継がれているのか
理由は実に明快だ
そこには時代の香りが漂うからだ

更には見知らぬ時代を頭の中でスクリーンの如く思い描くことができるからだろう…
それらが読み手に許容されている

無理な押し付けが一切見られない

『銀の匙』は名作中の名作である

今般挙げるのはその名作の著者たる中勘助の随筆集
明治42年から昭和38年の間に記された作品11を所収
中勘助の人となりが十分に伺える


静かで冷静な人…
文壇の外にいて自由であった人…
その評価はこの随筆集に全て滲み出ている気がする

作家の独自性とは
それは堕落した内輪の論争に迂闊に巻き込まれないことから始まる

距離を置くべき対象を見定める…
かつ向き合うべき対象を逃さない

安易な迎合から独自性は育たない

同時に名作も生まれることはない

「中勘助」の時間
それは決められた時代ではない…
まさしく「時間」
読者はそこに自由に自分を委ねる

珠玉の随筆ひとつひとつがそれを
無理なく与えてくれる気がする
2021-02-22 00:00:04[494]


金閣寺焼失
『金閣寺を焼かなければならぬ』
内海健
河出書房新社

今年令和2年は三島由紀夫没後50年の節目に当たる…
これを機にして三島由紀夫に関する著作物が色々と出版されている

作品の書評然り、盾の会関連然り

或いは著名人との対談本も然り…
どれもこれもが似たり寄ったりとも言えなくはない
当該著作はそれら似たり寄ったりを超えたところに位置付けてよい


三島の代表作のひとつ『金閣寺』

これは実際に起こった事件をモチ
ーフにしていることは知られる
著者の内海健氏は先ずはこの事件の犯人である林養賢という人物の心理構造を明らかにしていく…
精神医学を専門とする著者ならではの視点だろう…
更には作品の登場人物や三島由紀夫本人への切り込み方も斬新だ
三島本人や三島作品へのアプローチに新たな視点を与えてくれる

そしてもうひとつ
著者は三島に対しても作品に対し
ても要らぬ感情移入を避けている

本著に爽快さを感じるのは実にそうした点が大きい

兎にも角にも必読の書であることには間違いはない
2020-11-16 00:00:43[493]


中国という国
『大地の咆哮』
杉本信行
PHP文庫

本書は
『ODA幻想』
古森義久
海竜社
からの導きである

両書は中国という国を如実に語る

前書は外交官としての立場から…
日中平和友好条約締結両国交渉期を起点としている
もちろんODAにも言及している
後書はODAから日本並びに中国を政治的経済的に深く掘り下げる
著者の古森氏がその自著で良書として挙げたのが『大地の咆哮』だ

著者の杉本氏が自らの生命を摩耗しながらも外交官として取り組んだこととは何か…
それはひょっとして中国という国家相手ではなかったのではないか

国家ではなくむしろそこにいる国民ではなかったか
いや著者が対峙していたのは日本人であり中国人ではなかったのか

中国人との対峙
そこから中国という国を類推する
中国という国…
結局国柄は人によって決定される

国家とは空洞だ…
民衆の存在があって初めて組織化されていくもの…
それが国家なのだ
外交官にとって国家という組織との対峙は謂わば国民や民衆との間接的関わりそのものを意味する
僕の考えは幼稚で稚拙だろうか

本書は単なるもはや随筆ではない
後世に残すべき価値ある資料だ…
中国そして中国人という国を知る

いくら時を経ても民衆の性根は変わることはない…
本書はそのことを教えてくれる
2020-11-02 16:29:04[492]


50年を読む
令和の今年は三島由紀夫没後50年の節目の年になる
それに因んで三島関連本が数多く出版されている…
ひとまず現在の時点で興味深いものをふたつだけ挙げておきたい

『三島由紀夫を巡る旅』
徳岡孝夫
ドナルド・キーン
新潮文庫

これは以前に中央公論社から刊行された作品の改題文庫化である
三島とドナルド・キーンの直接の交友はとても知られるところだ
三島の遺書二通のうち一通はキーン氏に宛てられていたとされる
徳岡氏は自決の当日に楯の会会員から手紙と檄を受け取った人物だ

両氏は三島作品所縁の土地を巡る

また時々にキーン氏の三島の人となりが語られる…
徳岡氏の記者ならではの緻密な文章がキーン氏の語りを引き立てる

奈良から津和野、そして松江へ…
名文が時間を忘れさせてくれる

『三島由紀夫1970』
文藝別冊
河出書房新社

三島由紀夫という人間を表から裏から評した論文集
三島自身の論文も収録されている

左右の三島評が網羅されていてなかなか興味深い…
資料として是非残しておきたい

没後関連本は11月25日の憂国忌前後まで続けて出版されるだろう
僕が読みたいもの
はっきり言おう…
それは楯の会会員が三島由紀夫をどう捉えていたか
事件をどのように受け止めたのか

事件前とその後で三島観に変化はあったのかどうか
客観的な視点はこの際全く不要だ

そういう著者とその著書との出会いを期待している
2020-10-18 13:31:56[491]


日本論並びに日本人論
『歴史の真贋』
西尾幹二
新潮社

西尾先生の著書はほぼ網羅した…
「月刊誌-正論-」に掲載された論文も全て目を通した
そしてこれまでの西尾論の集大成

所謂日本論並びに日本人論の総まとめというべきか
正直いって本書はその位置にあるものと僕は思う…

西尾先生の日本論は相当手厳しい

もちろん日本人論は正面からバッサリ斬り込んでくるから凄まじい

その根幹にあるものとは一体何か

それは紛れもなく西尾先生流の歴史観他ならない…

西尾先生は語る…
事実が歴史なのではないのだ
事実について異なる過去の人々の思考と信心と伝達の総和が歴史なのだ

日本人が如何に歴史に無知であるか
日本人が如何に日本について無知であることを延々としているか
過去についても
現在についても
もちろん未来的類推についても…

平和に胡座をかく
それを平和ボケと人は揶揄する…
但し揶揄する側もされる側もボケからの脱却を図ろうとはしない…
アメリカの狡猾さに気付いていて
も検証に至らない
歴史を裏側から見ようとはしない

敗戦国日本の側から世界見る視点を持とうとしない
西尾先生は私たちに怠惰を教える

本書に小林秀雄や三島由紀夫についての触れがあることも必見だ…
数年前の憂国忌での西尾先生の講演を思い出させる

日本の歴史はどこから始まるか
日本人の起源をどこに求めるか
それらの問に一体どう答えよう
本書は軽い文芸書では決してない

かといって重い専門書でもない…
本書は考える書だ
読んで考察をする
これ程有意義な読書は他にはない
2020-10-04 15:40:48[490]


響きと余韻
『間違われた女』
小池真理子
祥伝社文庫

名前は実に大切だ
殊筆名は誰の記憶にも留まった方がいい…
その意味において
小池真理子
こいけまりこ
コイケマリコ
KOIKE MARIKO
間違いなく誰の記憶にも残り易い

今般久しぶりに小池真理子の文庫を手にとってみた
一時小池作品を片っ端から読み漁ったことがあった
男女の心の機微…
いや心の絡み合い
ただただ淫靡な肉体関係にはそう簡単に走らない…
肉体の絡みではなく心の絡み合い

今でも小池作品に飽きてはいない

時々戻りたくなる
そこが魅力なのだ

本作もまた期待を裏切らなかった

舞台は「あとがき」により1988年

メールでなく手紙
携帯やスマホでもなく固定電話と公衆電話…
アナログな世界とパラノイアの男

時代が心地良く錯誤する
しかし筋はあまりにも陰惨な悲劇でもって結末する

人間の運命は分からない
人間はそうした不透明で不明確で不明瞭な複雑怪奇な中で生きていくしかない
本書はそのことを改めて教える…

それでも人間はやはり生きるのだ

小池真理子はそう語っているのか

自らの名前を大いに響かせながら


いやいや違う…
記憶に残るのは名前だけではない

何ともいえない独特の余韻が本書から漂ってくる
小池真理子の世界はやっぱりいい
2020-09-21 18:59:21[489]


戦後を辿る旅
9月1日に拙書『戦後を辿る旅』が甲山羊ニの個人レーベルまきば出版から刊行された

日本にある戦跡を僕自身が訪れ、それを紀行としてではなく小説としてまとめ上げた

各戦跡ごとの短編小説の集合体だと考えてもらえれば都合がいい

旅は靖國神社参拝から始まる…
英霊に頭を垂れる
ここから知覧へ…
そして万世へ
また鹿屋へ
旅は広島から長崎、更に舞鶴から兵庫県加西を経て、極東国際軍事裁判法廷へ、そして大阪へと続く

ひとまずの旅の終着は沖縄だ…
伊江島から本島へ
旧海軍司令部壕内で敗戦の屈辱に身体を震わせる…

終戦ではなく敗戦
これはこれまでに僕が執拗に口にしてきたことだ…
記念ではなく屈辱
敗戦屈辱日を終戦記念日とする腐敗した歪曲こそが現代日本の平和ボケ現象を形作ってきた最大の要因に他ならないのではないか…

こういう記述をすると必ず人は甲山をこう評する…
奴は右翼作家だ
奴は好戦作家だ
奴は平和を破壊する扇動作家だ
などなど…

評価は有り難く頂戴しておこう
そして世の中の暇人共に拍手喝采を返礼しておこう
そこにしっかり弔辞を込めつつ…

今年は敗戦から75年の節目の年
その年に適って拙書を刊行する
この喜びは他に喩えようがない

旅はまだまだ続く
いや実際に続いている
真の鬼畜とは何かを考えながら…
それに強い憤りを覚えながら…
この世に生きている限りこの旅は延々と続いていく

そして…
『戦後を辿る旅』
その続編もまた当然範疇にある
2020-09-05 14:22:53[488]


読者への挑戦
『不連続殺人事件』
坂口安吾
新潮文庫

安吾の写真を見た人は必ず言う…
作家は実に不潔で貧乏で職業だと

そんなことはない
でも安吾にはお洒落は似合わない

お洒落の似合わない安吾が極めてお洒落に綴ったものがこの作品だ

しかもおまけ付き
読者への挑戦状…
受けて立つのもまたお洒落である

江戸川乱歩や松本清張も驚愕絶賛したとされる「不連続殺人事件」
はっきりいって推理小説でありながらそれを超えてしまっている…

ここはネタバレ禁
やはりここはお洒落に本を手にとってもらいたい…

追記としてひとつ
坂口安吾は小説も当然素晴らしい

だがしかし随筆はそれ以上に良い

島崎藤村を徹底的にぶった斬る
夏目漱石を味噌糞にこき下ろす
辛口以上の超辛口が僕には合う
お勧めしておこう
『堕落論?日本文化私観』
岩波文庫
2020-08-17 00:46:02[487]


石井妙子の世界
石井妙子という人
綿密な調査に裏付けられた名文…

『おそめ』は彼女の最高位の作品

伝説の銀座マダムに目を向けたその付け所も良い…
まるで小説のような評論
押し付けのない文脈と脈絡の連続


『原節子の真実』
石井妙子の世界を確立させた名著

暴露でも露呈でもない…
映画人原節子ではなく一市民原節子に寄り添うように迫る
小津作品をもう一度観るきっかけを与えてくれた

そして『女帝 小池百合子』
生きとし生ける人にも明確に焦点を絞り切る
そこから切り込む
証言者を蔑ろにしない
小池百合子が見えてくる
但しここでは…
僕の小池百合子評は避けておく
ただ一言
劣化した昨今の日本人を上手く欺くのは然程難解なことではない
加えて…
日本人の劣化は何も今に始まったことでもないが…

石井妙子女史へ…
彼女に要望したい
身内には甘々の、汚染尽くされている様子の大阪府警を暴けるだけ暴いてもらいたい
麻薬にまで侵された大阪府警巡査

入れ墨を入れた大阪府警巡査の実態を暴くのもよい

更には
橋下徹(はししたとおる)を掘り下
げるのもいかがか
小池百合子以上に興味深いのだが

それもこれもやっぱり下衆の期待に過ぎないのか
兎にも角にも
今後の石井妙子の世界
その広がりに期待したい
2020-08-03 00:15:41[486]