牧場小屋
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エッセイ
ああ言えばこう言え!
目次
ああ言えばこう言え!Ⅱその5
僕はむやみに人に話しかけるようなことはしない。だがら、逆にこれまたむやみに話しかけられないように気を遣う。つまりは、できるだけ人との接触を避けたい。そう思っているにもかかわらず、高いハードルを何とか飛び越えようとする人たちが後を絶たない。
特に季節柄の挨拶など、僕にとってはどうでもいいのである。
「暖かくなりましたね」
真冬でもあるまいし、暖かくないはずがない。季節というものを真剣に考えるべきである。以前、同じような挨拶を近所の人から言われた。僕は即答した。
「当然ですね」
その後、その御方は二度と僕に話しかけたりはしなくなった。作戦は大成功を収めたのだ。
困っているのはそれだけではない。最近、フェイスブックでとんでもない人から「お友だち申請」なるものがあった。それもご丁寧にメッセージまでついている。相手は学生時代の友人である。しかしその後の付き合いなどない。メッセージの文面が極めて親しげなことも、これまた二重の驚きである。もちろん、申請そのものはしっかり削除しておいた。
人間はお断りだが、犬や猫たちならいつでも歓迎する。近所の飼い犬に勝手に名前を付けたりするのも得意だし、それに犬だってそのことを結構喜んでいるように見える。時々ばったり会う猫たちにも、随分名前を付けてあげた。跳ぶように逃げていくが、あれはあれでかなり満足しているに違いない。こうしたご近所付き合いは、やはり続けるべきだと僕は思う。そして相手も同じであるに違いない。
甲山羊二
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