ああ言えばこう言え!Ⅱその1

 「目には目を」という言葉がある。「歯には歯を」という言葉もよく知っている。それぞれ復讐の度合いというものを示すものらしい。ただし復讐は良くない。復讐された者は、また新たな復讐を実行する。それはまるで輪廻転生のように、ただひたすら回転し続ける。しかし、一方では一期一会の復讐というものもあって、これであれば新たな復讐に恐れることもなく、その企てに身を削るほど苦心する必要もない。極めて便利な復讐法である。
 とにかく、最近の老人は元気一杯、資産一杯で、なかなか活動的である。週末ともなれば、主要駅のコンコースなどは、力漲る老人で溢れかえっている。ただマナーは悪い。
 先ず声が大きい。やくざの出入りと間違えてしまうほどである。次に着メロの音がいやにでかい。響き渡るとはこのことをいう。このマナーの悪さでもって次のように近づくものだから、はっきり言ってこれにはほんの少しの殺意さえ覚えてしまう。困ったものである。
 「○○方面は何番ホームじゃ!」
 下調べに欠けているといえばそれまでだが、浮かれ気分にも程というものがある。そこで、こういう場合、僕にはあるひとつの心得がある。そしてそれをすぐに実行へと移す。
 「なるほど。なるほど。○○方面ですね。それなら17番線か18番線になりますよ。お気をつけて。(永遠に)いってらっしゃい」
 もちろん礼の言葉はない。あるのは意気揚々と、幻のホーム17番線と18番線へと向う後姿だけである。やはり一期一会は良い。

甲山羊二